「外国人が増えれば犯罪が増える」は嘘だが、入管法改悪は外国人労働者を犯罪に追い込む可能性も

過剰労働だけでなく、いじめや暴行などの人権無視までもが横行していることが次々と明らかになっている技能実習生の問題。

まさしく「現代の奴隷制度」「現代の徴用工」と言っても過言ではない状況だ。

しかし、技能実習生に「嫌なら辞める」という選択肢はない。なにしろ、本国で借金を背負って来日している場合が多く、もし辞めれば即刻強制送還。後に残るのは借金を背負い、家族にまで迷惑がかかるかもしれないという恐怖も抱えているのだ。

そのため、「失踪」せざるを得ないという状況に追い込まれる。今年の失踪者は半年間で4279人にも上っている。このまま行けば、過去最高だった去年の約7000人を確実に上回るとされている。

◆不法就労せざるを得ない状況を作り出すのは誰か?

失踪してもそれまで薄給でこき使われてきた身である。貯金などは当然ない。最悪の場合、それまでの給料も雇用先に握られていることすらある。本国に帰るにも費用がかかるし、前述したようにそのまま帰ることは家族に迷惑がかかるため、どこかで働かざるを得なくなる。仮にそれが「不法就労」になってしまうとしてもである。

こうした不法就労をした場合、不法行為であるのは確かにそのとおりなのだが、そのような背景があるのだ。それを無視して、一様に「犯罪者」扱いされることになってしまう。それは悪名高き入管も然り、メディアでの報じ方も然りである。

つい先日、実習先の建設会社から失踪して港区内の飲食店で東京都の最低時給以下で働いていたミャンマー人が逮捕されたことがニュースになったが、報道によれば、”「日本は稼げると聞いて技能実習に来た」「同僚から嫌がらせを受けて失踪した」”と証言しているというが、報道も彼らの不法就労を取りざたすばかりで、実習先でどのような嫌がらせがあったのかや、最低時給で働かせていた飲食店の問題などについては一切報じていない。(参照:実習先から失踪し不法就労か ミャンマー人9人逮捕 TV朝日ニュース)

「なぜ彼らが研修先から逃亡せざるを得なかったのか」に目を向けずに、彼らを犯罪者扱いするだけでは問題は一切解決しないだろう。

そして、悪いことに、地獄のような職場から抜け出して救いを求めた「カタギの仕事」でさえ「犯罪者」扱いされる中、本当の犯罪組織や非合法の仕事への誘いが彼らを待ち受けているのである。

◆脱走した実習生を狙う犯罪組織

不法就労した外国人の相談に乗ることも少なくないという日本人のAさんはこう語る。

「技能実習生として来日したけど過酷な労働に耐えかねて脱走した女性を狙って、WeChatなどで人を集めている連中がいます。彼らの多くは、非合法のマッサージ店に失踪した女性実習生を派遣します。

いま、いわゆるチャイエスと呼ばれる中国エステ店も、留学生などを雇うと摘発時のリスクが風営法だけでなく入管法にも違反するので倍増し、悪くすれば店主の在留資格も剥奪され強制送還されます。

そのため、“まともな”というと語弊はありますが、ソフトサービスだけの店などは在留資格が不確かな人は雇わない傾向にある。つまり、脱走した実習生を雇うのは“まともな店”ではない。つまり本番などを強制されるような店であることが少なくありません。

さらに悪いことに、その際に、旅券や在留カード、通帳などを“安全なように保管してやる”とか、いろいろと甘言を弄して逃げられないようにする連中もいるようです。悪質な日本の技能実習先から逃げた同胞を、同国人の不良が食い物にしているんです。技能実習生のコらは、逃げ場も救ってくれる人もいない、真の“弱者”なんです」

また、中国に替わり、実習生の派遣元として増えているベトナムについても同様だ。

「近年では来日外国人の犯罪件数で中国人を抜いて最多となっているのがベトナム人ですが、こうしてベトナム人の犯罪が増える要因の一つが技能実習生制度だと思います。ニュースで暴行を受けたベトナム人技能実習生の姿を見ましたか? あんなの私の知る限りでは結構日常茶飯事ですからね。

もともと日本に来る前に話していた内容にない作業、原発での除染作業だとかに派遣されるようなケースだけでなく、虐待や差別が横行している職場ですよ。逃げ出さざるを得ない。そうして逃げ出したコらを、もともとあるベトナム人犯罪グループがリクルートするわけです」

◆「外国人が増えると犯罪が増える」はデマ

いまや、事実上の移民制度を進め、入管法を改悪しようとしている安倍政権によって、5年で最大34万5000人の外国人労働者を受け入れる見込みだという。しかし、その制度は現在の奴隷制度のような技能実習制度を経営者の都合の良いように延長させるための仕組みに過ぎず、横行する人権侵害などを改善する見込みはなにもない。

そうした、財界の都合だけで働きに来る外国人労働者の人権をまったく無視した安倍政権の進める外国人労働者受け入れ政策は首肯し難い。

しかし、それ以上に許せないのは、そうした外国人受け入れ政策に反対意見を言う側が、ときに「外国人が増えると犯罪も増える」などと根拠なきヘイトスピーチを理由に上げる人がいることだ。

そもそも近年在留外国人は急増しているが、外国人の犯罪検挙件数・人員ともに減少傾向にある。警察庁発表資料でも、“平成の初期から増加傾向にあった来日外国人犯罪は、検挙件数については、ピークであった平成17年から28年にかけて、4万7,865件から1万4,133件へと大きく減少しており、検挙人員についても、ピークであった16年から28年にかけて、2万1,842人から1万109人へと大きく減少している”とある明確なファクトである。(参照:平成29年版警察白書」)

このように「外国人が増えると犯罪が増える」というのは嘘八百のデタラメなのだ。

しかし、その反面、不幸にして犯罪に身をやつしてしまう在留外国人には上記のような失踪技能実習生などが少なからずいるのもまた事実である。

彼らの人権や労働環境がきちんと守られる制度を確立せず、単に格安な労働力として人権を無視した外国人受け入れを続ける限り、そうした制度自体が「外国人による犯罪」を生み出し、排外主義者がそれを大義名分としてヘイトスピーチを撒き散らすという負の連鎖は決して終わらないだろう。

「外国人が増えると犯罪が増える」と、根拠なきヘイトスピーチを撒き散らす安倍政権支持者は、日本で技能を習得しようと来日した本国では犯罪とは無縁だった外国人が、実習先で虐待と差別と劣悪な労働条件で働かされ、結果として犯罪組織に逃げ込むしかない人々がいるという現状をどのように考えているのだろうか?

<取材・文/HBO取材班>